■水平思考とは

事実をもとに、論理的、分析的に物事を考える垂直思考に対して、既成概念にとらわれない新しいものの見方をすることにより、答えを導くのが水平思考である。


■イノベーションを実現する水平思考

米国人のカレンが「スーパーマーケット」というビジネスモデルを考えたとき、まわりの誰もが反対した。
「セルフ方式は煩わしい」「値札をつけるのが大変」「お客が迷う」etc・・・。

結局、カレンは、社長を説得するのをあきらめ、自分自身が店をオープンさせた。そして、キング・カレン食料品店の第一号店は、驚異的な売上を記録した。


一般的に、イノベーションが起こるとき、最初の(水平思考による)意見には否定的な見解がつきものだ。
つまり、イノベーションを実現するとき、水平思考が有効と言える。


■水平思考の例

年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の話

多額の借金をした父親と娘に、醜い金貸しがチャンスを与える。
地面から白い石と黒い石をひとつずつ拾い上げ、袋に入れてくじをつくった。
「白い石を引いたら借金は帳消しだ」
「黒い石を引いたら借金は帳消しだが、娘は嫁にもらう」
このような提案をし、娘にくじを引くように迫った。

美しい娘は、醜い金貸しの嫁にはなりたくない。しかも、金貸しが二つとも黒い石を入れたくじをつくるところを見てしまった。

〜このとき娘はどうするのが賢いか?

既成概念にとらわれた垂直思考では、
「くじを引くのを拒否する」
「インチキを暴いてくじをつくりなおさせる」
「父親を救うために嫁にいく」
などしか浮かばない。

垂直思考では、娘が取出す石の色にとらわれたままなので、有効な問題解決方法が見いだせない。

水平思考では、袋の中に残る石の色にも注目する。
娘はくじを引く。が、石の色を確かめる前に、地面に落してしまう。
「あらっ、私ってそそっかしいわね。でも大丈夫!袋に残ってる石の色を見れば引いた石が何色だったか分かりますものね」


参考文献:エドワード・デボノ(1971)『水平思考の世界―電算機械時代の創造的思考法』講談社


■Q.1
ある寒い雨の夜、あなたはスポーツカーを運転していた。バス停を通過したとき、3人の姿を見た。1人は20年ぶりに見る学生時代の親友。1人はあなたの理想の異性。もう1人は重病の老婦人。しかし、車にはあと1人分の座席しかない。あなたを含め、すべての人が満足する方法は何か?


A.1
親友に老婦人を送ってもらい、待つ間、理想の異性と過ごす。


■スキル1:前提を疑う

カワカマス症候群とは、状況の変化に適応しないで、誤った固定観念を抱き続けること。このような、前提、先入観というものにとらわれない思考が重要

・定義の中に含まれる前提を疑う
・経験と既知の事実からの推測を疑う
・過去にうまくいったことが現在もうまくいくと思わない
・当然だと思っている日常の物事を疑う
・ゲームのルールを変えてみる、同じ武器を使わない、違う武器を選ぶ
・常に自分たちを弱者だと思う、リーダー企業であっても慢心しない
・偉大な人たちはいかに誤ったか?偉大な人ほど誤る、新しいアイデアを否定する

前提を疑うための秘訣
・人は、あらゆる事態について、根深い前提を持っている
・これらの前提を発見し、それに挑むために、根本的な質問をたくさんする
・部外者になったつもりで、そもそもどうしてこのやり方をしているのか自問する
・事態をシンプルな要素にそぎ落とし、現在の環境の外に持ち出す
・問題を別の言葉で言い換える
・ベテランや専門家の助言をよく検討し、それと正反対のことを考える


■スキル2:探り出す質問をする

・当たり前だと思っていることについて質問してみる
・初心者の目で見てみる
・仕事についても根本的な質問をする
・知識よりも創造、スーパーマーケットの発想も知識ではなく創造力
・常に疑ってかかる組織をつくる

質問するための秘訣
・どうすればの質問
・なぜの質問


■スキル3:見方を変える

・視点を変えて考える
・他の人の立場に立って考える
・伝統のやり方を疑ってみる
・関連性を可視化すればわかる
⇒キーワードを書き出す
⇒その中で、関係があるものを目に見える形ですべてつなげてみる

見方を変えるための秘訣
・まったく違う方向から問題にアプローチする
・顧客や製品自身の身になって考える
・問題を違う言葉で表してみる
・問題を目に見える形に表現する
・今の状況について、まったく違う分野の友人と議論する


■Q.2
ある教師は、次の日教育長が視察に来ることを知った。おそらく教育長が問題を出して、その教師が答える生徒を選ぶ手はずになるだろう。教師は、学校の良い印象を与えたかった。良い印象を与え、生徒が正しい答えを出す確率を高めるため、彼女が生徒に指導した方法は何か?


A.2
自信のある人は右手を挙げ、自信がない人は左手を挙げなさい。


■スキル4:奇抜な組み合わせをしてみる

・関係ないと思っているものを組み合わせてみる
⇒自社開発ののりは接着力が弱かった
⇒そののりとしおりとを組み合わせる
⇒ポストイットの誕生
・できるだけ奇抜な組み合わせをしてみる

組み合わせを探るための秘訣
・自社の製品を他の製品と組み合わせる
・自社の組織と他者の組織を組み合わせる
・顧客が自社の製品をどう使うのか、一緒に使うか


■Q.3
ある若い株のブローカーが、新しく開業しようとしていた。顧客はまだ1人もいない。彼が、少数の資産家に対して、自分が株価の変動を予測できることを納得させるためにとった手段は何か?


A.3
800人のうち、400人に対し「この株は上がる」と予測し、400人に対し「この株は下がると」と予測する。それを5回繰り返すことで、予測を5回連続的中させた顧客が25人残る。


■スキル5:アイデアを採用し、応用し、さらに改良する

・他社のアイデアから学ぶ
・アイデアをどう仕事に生かすかを考える
 ⇒エスキモーのイグルー(雪のブロックでつくる簡易住居)を訪れたバーズアイが、冷凍食品産業を興した

応用できるアイデアを見つけるための秘訣
・関係のないところから情報を集める
・まったく違う環境の人と問題について議論する
・いつもと違う環境に置くことで、新しいインスピレーションを得る
・他の分野で似ている状況を探し、それがどう処理されているか調べる


■スキル6:ルールを変える

・ゼロから考えるより、思い切って販促をルールにしてみる
・ライバルがつくったルールに従う必要はまったくない
・顧客にとって使い勝手のよいルールに変える
・他の業界のルールを応用する
・時代遅れの仕事のルールは捨てる
・異端児こそ業界を震撼させる
 ⇒バージンアトランティックス(ビジネスクラスに1stクラスのサービスを)
 ⇒ボディショップ(安いプラスチック製の容器に簡素なラベルを貼ったパッケージ)

ルールを破るための秘訣
・仕事には暗黙のルールがある
・すべてのルールを書き出す
・見落としているルールを書き足す
・必要不可欠なルールだけ残す


■Q.4
たいていの店では、切りのよい数字の少し下に値段を設定している。例えば、10ドルではなく9ドル99セント、100ドルではなく99ドル95セントという具合に。これは、消費者に安い印象を与えるためだと思われているが、実は当初の目的は違っていた。さて、この手法の本来の理由とは何か?


A.4
おつりのためにレジの引き出しを開かせることで、従業員の不正を防止した。


■スキル7:アイデアの量を増やす

・アイデアは質より量だ
・とにかく、アイデアを出してみる
・出たアイデアを3つに分ける
 ⇒よいもの、ダメなもの、面白いもの

アイデアを増やすための秘訣
・ブレーンストーミングにかける
・アイデアの数の目標を高く設定する
・会議の熱気を高く保つ
・新しいアイデアを奨励する
・アイデアを批判しない
・アイデアをつなぐ
・アイデアの改良、応用、組み合わせ
・最も有望なアイデアは、6つの帽子で分析する(エドワード・デ・ボーノ)
 ⇒白い帽子(情報を求める)
 ⇒赤い帽子(抱く感情を述べる)
 ⇒黄色い帽子(よい点を述べる)
 ⇒黒い帽子(欠点を指摘する)
 ⇒緑の帽子(改良点を述べる)
 ⇒青い帽子(思考プロセスがうまくいっているかを述べる)


■Q.5
ニューヨークに「7つのベル」という名の店があるが、その店の表には8つのベルがぶら下がっている。どんな結果になっているか?


A.5
間違いを指摘する客が入ってくる。ついでにものを買ってくれ、売上が上がる。


■スキル8:試してみて、評価する

・試してみなければ何も始まらない
・試作品を軽く見るな
・イノベーションの性格を知る
 ⇒「実行の困難さ」と「実行による変化の大きさ」のマトリックスで考える(困難度が低く、変化が大きいのが理想的)
・アイデアを評価する(ゲーティング法)
 ⇒ステージゲート法(査定、レポートの作成、開発、テストと検証、発売)


■スキル9:失敗を歓迎する

・失敗から学ぶことはたくさんある
・偶然をうまく使う
 ⇒カビの発生を見て、ペニシリンを発明(フレミング)
・失敗を、成功への通過点と見なす

失敗を歓迎するための秘訣
・失敗を、名誉ある失敗と無益な失敗の2つに分ける
・名誉ある失敗は非難されないことをよく周知させる
・名誉ある失敗は認め合い、自慢もさせる
・名誉ある失敗に公然と報償を与える
(※ホンダは名誉ある失敗に報奨金を与えていた)


■Q.6
米国カリフォルニアでのゴールドラッシュの折、ある若い起業家が採鉱者にテントを売ろうと現地に向かった。彼は、現地に群がる多くの採鉱者相手によい商売になると目論んでいた。しかし、残念なことに、現地は気候が温暖で、野外で寝泊まりできるため、テントは売れなかった。そこで、彼はどうしたか。


A.6
丈夫なテント生地で、過酷な労働に耐えうるズボンをつくって販売した。これがジーンズの発祥。


■スキル10:チームを活用する

・1人では何もできないと思え
・チームをつくり、すべてを任せる
・社員全員からアイデアを集め、分類する
・創造にも訓練が必要だ
・外部のチームもうまく使う
・顧客を観察する


■創造力を押しつぶす悪習

悪習1:アイデアを批判する
悪習2:ブレーンストーミングを軽視する
悪習3:問題を抱え込む(広く参加させアイデアを求める)
悪習4:イノベーションに効率を求める
悪習5:過労を美とする(古いやり方で懸命に働く)
悪習6:計画にないことをしない
悪習7:失敗した人を責める
悪習8:新しい事業にすぐに結果を求める
悪習9:すべてをアウトソーシングする(内部で責任を持つ人がいなくなる)
悪習10:内部から昇格させる(変化や破壊的なアイデアを拒む)
悪習11:通常のラインに革新プロジェクトをゆだねる
悪習12:訓練しない


参考文献:スローン(2007)『イノベーション・シンキング』ディスカバー21